【人事労務のリスク管理メモ】12月号アップしました
【今回のストーリー】
●怖い顔で威嚇する上司
感情的な言動の多い上司Aに悩まされていた私たちは、思い切ってAの上司に当たるB部長に何とかして欲しいと泣きついた。 Aは少しでも気に入らないことがあると、「さっさと辞めたらどうだ」とか、「何度言った分かるんだ、このボケが」などをすぐに連発する。特に同僚のCに対しては、「カメ子」と侮蔑するように呼んでいる。しかしCは怠けているわけでもなく、熱心に仕事を覚えようと努力していることなど全く評価しようともしない。こうした言動が日常的に行われていることをB部長に伝えると、BはAに対して、言動に注意するよう指導したらしい。 そのせいか、汚い言葉遣いは改善されたが、変わったのは言葉遣いだけで、言っていることは全く変わらなかった。「さっさとやめたらどうだ」が、「すぐに辞めることを考えた方がいいのでは?」に変わった程度で、ほかにも「あなたの働きは給料に見合っていません」とか「どうして分からないんですか」「あなたそれでも考えてるんですか」といった調子で、口調が乱暴でなくなった分、攻め立てるような辛辣な叱責が多くなり、かつ、くどくなってきた。 たまりかねた私たちは、再びB部長に相談したところ、今度はAは何も言わ無くなってしまった。業務上の指示を仰ごうとすると、すごい形相でにらみつけるだけで、何も言おうとしない。それでは困ります、とさらに続けると、「なんでやねん、何が悪いねん」とAは関西出身でもないのになぜが関西弁口調で怒鳴る始末だった。 その後、業務上の必要事項はB部長に確認し、上司のAとはまったく口を利かずに仕事を進めている。それでも気に入らないことがあると、Aはお決まりのすごい形相で周囲をにらみつけるのは相変わらずで、以前よりはましかと思いつつも、こんな職場に居続けることに苦痛を感じている。
●勝手気ままな上司とそれを放任する人事
上司のDの下での仕事は、確かに楽と言えば楽だが、その勝手気ままな言動には、ほとほと思いやられる。それはDが、とにかく仕事をしないことだ。 最近では、新しいスマホを手に入れたとかで、一日中そのスマホをいじっていたこともあった。それなら自分たちも仕事をしないで一日中ネットでも見て過ごすか、という訳にもいかない。自分の仕事まですべて丸投げのDは、不思議なことに人事には受けが良いらしい。 この職場にイケメンの新入社員Eが配属されると、Dにしては珍しく、かいがいしく世話を焼いている。その程度なら見て見ぬ振りもできるが、万事マイペースのDは、お昼休み前からEを連れ出し一緒に食事をしている。出張だ、会議だといってはEを連れ出し、職場で仕事をすることはほとんどない。そのため、Eに割り振られた仕事まで負担することになった。 Eに仕事をしてほしいと話すと、なんとDはEと話を交わしたことをに対して猛烈な嫉妬をする。Dに言いなりのEもEだ。仕事をしない社員が二人もいる職場のしわ寄せに業を煮やして、この問題を人事に相談したが、もう少し我慢してくれ、の一点張り。どうなってるんだ、この会社は!
●あなたの返事は私を不快にする
Fは製造ラインに配属されたが、もともとこの部署での主力はベテランのパートで、社長まで「この職場はパートで成り立っている」と公言してはばからないため、工場長もパートには頭が上がらないらしい。Fにとっても、やり難いことこの上ない。 そのせいか、パートらの鼻息は荒い。中でも年長のGは間もなく七十を超えようとするベテランで、その威容は工場長顔負けであるだけでなく、その言動も工場長そのものだ。ただ、ことのほか新人のパートにはきつく、少しでもミスをすると「いつ辞めてもらっても構わない」「替わりはいくらでもいる」などと周囲を憚らず暴言を吐く。 このため新しいパートは定着せず、採用しては短期間で離職することを繰り返していた。 この現状に問題を感じたFは、Gに対して、最近辞めた新人パートへの言動には問題があることを告げると、Gは、「そんなことは一言も言っていない、それは気のせいだ。言ったのは工場長じゃないのか」などと平然ととぼけている。とぼけているのか、本当にぼけているのか分からないが、職場で公然と言った言動まで否定するのでお話にならない。 それでもはっきりとここで言ったじゃないですか、と詰め寄ると、今後は逆ギレし、「こんなな話の分からないヤツは相手ならない」という始末。これ以上言ったことろで仕方がない、とFが諦めかけたところで、GがおもむろにFを呼んだので、Fは「何でしょうか」と答えると、Gは、「返事は『ハイ』と答えるもので『何でしょうか』ではない。あなたの返事は私を不快にする」と、のたまわった。どこまで人を食った対応なんだ。Fは思わず握った拳が震えた。 こうした状況に対して、会社としても問題として考えた結果、パートらに対して異例の(?)指導をすることになった。その内容は、新人のパートに対して、丁寧に対応するよう求めるなど、当たり前のものだったが、それに対してGらベテランパートは過剰に反応をした。これらの指導は高齢者を不当に排除することを意図したもので、断じて許せない、高齢者に冷たい職場だ、挙句の果てには、パートの人権を守れ、などと訳の分からないことまで言い出した。
●私の周りで、ものが盗まれるんです
思い悩んだ面持ちでHがこちらを見ている。Hの上司であるIは、今度は何だろうと憂鬱になった。HはIのところまで来ると、「ものが盗まれるんです」という。「私がいないときに、ハンカチとか、ペンとか、電卓とか、いろんなものが無くなるんです。」 無くなると言っても、即誰かが盗んだとは判断できない。どこかに置き忘れたのではないか、デスクの陰に落ちているのでは、などを答えても、きっとこれは盗まれた、という。 袖机には鍵がかかるから、忘れずに鍵をかけおけば安心じゃないか、と言っても、鍵をかけても開けられる、という。何という心配性なのだと思いつつも、Hにばかり対応していられないので、業務上の話を別のスタッフと話し始めたが、ふとHを見ると下を向いて泣いているようにも見える。Iは気になってHの席に行き、声をかけると、「私の変な噂を話さないでください」とポツリと言った。