いかにトラブルを未然に防ぐかを考える4つのQ

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Q1:たとえ適切な労務管理をしてしても、従業員に問題があればトラブルは避けられないのでは?

トラブルメーカーを雇用してしまった以上、その従業員と付き合わざるを得ません。そうした従業員に対しては、日常的な教育指導など適切な労務管理によってトラブルを顕在化させないことが大切です。また非違行為の態様次第では、懲戒処分や解雇といった措置も検討できます。もっともその前に、トラブルメーカーを採用しないための工夫が必要です。これも大切な労務リスク管理です。労務トラブルのそもそもの原因は、そうしたトラブルを起こすような従業員を採用したことにあるのです。

Q2:労務トラブルへの対策は、万が一、それが起こった時に考えれば良い、と思われますか?

起きてしまったトラブルに対しては、平穏迅速に解決するための対応策を講じることが大切で、ここでの対応を誤れば、トラブルを複雑化させ、解決が一層困難なものとなりかねません。特にこれが訴訟に発展した場合には、会社の受けるダメージは、経済的なものだけにとどまらず、社会的にも、また社内的にも大きな影響が避けられません。トラブルは平穏に解決する方向性で対応することで、トラブルの鎮静化を図り、会社が受けるダメージを最低限にとどめなければなりません。

だからと言って、トラブルの相手方の主張を、丸呑みすることが問題の解決ではありません。法的な解釈から導き出されるあるべき結論に向かって、建設的な議論に努め、納得性の高い合意点を探る努力を惜しまないことです。これはには大変なエネルギーが必要です。

計り知れないトラブルの代償

たとえ訴訟にならなかったとしても、労基署に残業代の未払いを申告されれば、遅かれ早かれ調査官が会社に訪れ、事実関係の報告を求められます。ここできちんとした説明ができなければ、様々な行政指導を受けることになります。また、行政による解決制度の俎上に乗ることもあるでしょう。あるいは労働組合の結成と同時に団体交渉の申し入れを受けたのならば、心身ともに疲弊するような話し合いに、繰り返し応じなければならないのです。

ですから、こんなに負担の大きいトラブルは回避できるに越したことはありません。トラブルへの対応に追われることで、通常の業務は著しい停滞を余儀なくされます。社長を含めた経営陣は、直面するトラブル対応に四六時中追われることになります。また、たとえ業務に従事していたとしても、トラブルのことが頭から離れることはありません。これはトラブルの当事者である労働者にとっても、同様に大変な労力を強いられ、できることなら避けたいというのが本音のなのです。こうした意味でも、トラブルは会社運営にとって、絶対に避けなければならないものなのです。

トラブルは未然に防止することが何よりも重要

トラブル対応の負担の大きさは、トラブルに遭遇して初めて実感できるものかもしれませんが、それに比べれば、普段行うべきの労務リスク管理に費やされる労力は、ほんのわずかなものです。しかもそのほんのわずかな日々の労務リスク管理に対する注意によって、計り知れないダメージをもたらすトラブルが回避できるとしたら…労務リスク管理は、会社運営に必須の業務の一部です。

ところが、大半の経営者の方は、トラブルに遭遇して初めて「労務リスク管理」の重要性を実感します。

トラブルに遭遇して、その時に初めて、トラブルの前兆があったことを、改めて思い起こします。「そういえば、あのときにこういうことがあった、あれはこういうことだったのか…」そして、「あの時、こうしていれば…」と。

そして最後に、「今回はいい勉強をした。高い授業料を払った」と、必ず言われます。でも、トラブルが無ければ、高い授業料は必要ありません。それに失うものは金銭だけとは限らないのです。授業料の支払いだけで済めば良い方で、最悪の場合、会社そのものの消滅に追い込まれることすらあり得るのです。

ですから、一人でも多くの経営者の方に、トラブルが実際に起きる前に、労務リスク管理の重要性をご理解いただきたいのです。

トラブルの発生の前には、必ずその伏線=「前兆」があるのに、どうして放置されてしまうのか?

Q3:トラブル回避のためには、具体的に何をすれば良いと思われますか?

トラブルには必ず「前兆」がある

では、実際にトラブルを回避するためには、なにをすればいいのでしょうか?典型的なトラブルに対しては、防止研修なども一つの方法でしょう。これは別の意味でとても重要です。しかしトラブル回避の直接的な効果は期待できません。まさに今起きようとしているトラブルを、もっと早く、未然に察知するには…ここで大切なことは、トラブルには必ずその前兆がある、という事実です。

「前兆」はあまりに些細で、見逃しがちなもの

トラブルの前兆を敏感に察知して、適切な対応ができれば、深刻なトラブルのリスクは大きく軽減できるでしょう。しかしその「前兆」は、日々の業務の中で、あまりに当たり前の行動であったり、取り立てて珍しいものではないため、あえて対応しなければ、という気持ちが持てません。が、心のどこかで、「どうも変だ…」と思っていることも確かです。

また「どうも変だ…」と思ったとしても、それをあえて誰かに相談するとか、なんらかの対応をするなどの具体的な行動には、なかなか結びつきません。それは、重要性を感じなかったり、あるいは重要だと思ったとしても、今すぐにしなければならないという緊急性が感じらないからです。こうしてトラブルの前兆は放置されていきます。

労務リスク管理の第一歩は、就業規則にあり

労務リスク管理の方法として、まず第一にしなければならないことは、就業規則の整備であることは間違いありません。就業規則は、会社と従業員の間の約束事、というより、契約内容そのもので、何らかのトラブルが発生した時には、まずこの就業規則に何が書かれているのか、が問題になります。法律上も極めて重要な文書で、その内容によって、問題の解釈が逆転することもまれではありません。

Q4:就業規則をしっかり作成しておけば、労務リスク管理は大丈夫…?

しかし、どんなに周到かつ精緻に作成した就業規則であったとしても、何年もそのままにしておいたのでは、かえってトラブルの原因になりかねません。特に、労務リスク管理の視点からは、法律改正や判例の動向変化、社内状況の変化に応じて、こまめに作り替える必要があります。これは一見大変な作業です。しかし、労務管理担当者などが、就業規則についての管理を定期的に行っていれば、社内的な微調整が可能です。ところが、これをまとめて一度に就業規則の見直しと改訂をしようとするから大変なのであって、日ごろから注意を払っていれば、難しい作業ではありません。

就業規則も、日常的なケアが大切

しかも社内的に就業規則のメンテナンスを日ごろから行うことによって、就業規則が、事務所の隅に置いてあるだけの飾り物から、労務リスク管理のための「生きた」ツールになります。就業規則を作りこむことによって、トラブルが避けられるのではなく、そうして作りこんだ就業規則を「生きた」ツールとして利用することで、はじめて就業規則が労務リスク管理の役に立ちます。逆に言えば、ツールとして利用しなけば意味が無いとさえいえるでしょう。

トラブルを回避するのは「人」の力

トラブルは就業規則が解決してくれるものではありません。就業規則が、解決ための一つの材料としての役割を担うことは大いにあります。しかし解決する主体は人の力にほかなりません。

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