相談窓口に関するトラブル

相談窓口がトラブルの元凶!?

本来問題解決のパイロットとなるべき相談窓口が、トラブルの元凶になってしまているケースが実は決して珍しくありません。私が開設しているネット上での相談窓口には、会社が設置する相談窓口に相談したが、何も解決しない、というご相談はいくらでもあります。

その程度であればまだしも、相談窓口に相談したら、相手方当事者に話が筒抜けになっていた、職場のみんながなぜか知っていた、というものや、さらには、相談窓口に相談した翌日に、なぜかいきなり人事に呼ばれ、相談した事実についてすべて否定する説明をされた、トラブルの相手である上司らから、報復的な対応を受けた、さらには、「なぜコンプラにちくった!」などとあからさまに怒鳴られたとするものまであります。

相談窓口に設置は、法的な要請もあり、どのような経緯であれ、何らかの相談窓口を設置している企業は多いと思いますが、形式を整えることだけを考えた場合には、その相談窓口が、トラブル発生の発火点になってしまうことにもなりかねないリスクがあることを認識しておく必要があると思います。

相談窓口の意義は、クレーム段階での問題収束にあり

相談窓口の意義は、トラブルを未然に防止することにあります。苦情の処理、つまりクレーム段階で問題の解決を図ることで、トラブルの顕在化を防ぐことがその目的であるはずです。

ところが、形式的に相談窓口を設置したのみで、相談窓口の担当者が、どのような対応をしているのかなど、その運用に関して適切な管理を怠っていると、後でとんでもないトラブルに発展することもあるのです。

もちろん、どんなに慎重な対応に心がけていたとしても、トラブルに発展するものはあります。しかしすくなくとも、その原因が相談窓口の対応にあるという状況だけは、何としても避けておかなければならいと思います。そのためには、相談窓口担当者の対応方法について、十分な研究、研鑽が必要ではないか、と私自身日々感じているところです。

相談窓口に相談したのに、問題が解決しない

これは非常によくあるご相談です。この段階で私がネット上の相談窓口で頂くご相談は、相談窓口に対する不平不満というものではなく、今後どうすればいいか、上司のパワハラに対して、役に立たない相談窓口を使わずに、どうすればいいか、というものです。

相談窓口に対する不平不満というよりは、相談窓口に対するダメ出し、あきらめ、落胆、という評価であり、気持ちの吐露にすぎないのですが、相談窓口担当者としては、大いに反省材料として研究しなければならないと思います。問題は、なぜそうなったのか、ということです。

大抵の場合は、説明不足

相談窓口に対しては、相談者は多大な期待を抱いています。相談窓口に相談すれば、事態が打開できると信じています。それほど相談窓口へ相談することは、相談者にとって勇気がいることです。その裏返しが、大きな期待につながるのですが、一方で、相談窓口には、たいていの場合、相談内容の「受付」であって、具体的な解決機能を持っていないことがほとんどです。

このときに相談窓口担当者に必要になるのは、相談者が相談する問題を、どの部署に伝えることが、最も効果的な解決につながるか、を考えることです。といっても、あらかじめ次につなぐ部署が決まっている場合には、その余地すらありません。

こうした場合に、相談窓口の担当者が、「ここでは相談を受け付けるだけです」などと伝えてしまうことがあるようです。この点に関しての是非は、会社内での事情が大きく関係すると思われますが、これを聞いた相談者はどう思うでしょうか。

相談窓口の大切な機能は、トラブルの未然防止、クレーム段階での問題の収束にあります。そうした意味では、まず問題提起の第一段階目の受付では、相談者の不安、不満、不平、怒りの矛先のバッファになるべきと思うのですが、相談担当者にとっては酷でしょうか。

相談受付のハードルが高すぎる

相談の受付だけであるのならば、一応話を全て聞いてあげる程度の対応は欲しいところですが、時間の制約や、話が冗長になり、同じ話の繰り返しになることはよくありますので、相談者の気持ちを逆なでせずに、どう対応を切りかえるか、悩ましいところではあります。

外部の相談窓口などでは、事実関係の特定ができないと対応できない、と門前払いをされてしまうケースがあるようです。事前のアナウンス不足が不満を生んでしまったものと感じますが、かなり踏み込んだ解決機能が付与されている相談窓口などでは、これもマニュアル的な対応だったのでしょう。

また、相談をするまでの手続が煩雑で、途中であきらめてしまった、というご相談を受けたこともあります。

このようにハードルが高すぎる場合に、相談者が次に労働局の総合労働相談コーナーに相談して助言指導を申し出たなどのケースでは、行政の相談窓口よりも社内の相談窓口の方がハードルが高いということになってしまっています。これでは何のための相談窓口なのか、分からないという結果になりかねません。

人事部長がパワハラ!?

これはかなり問題が大きいケースがあります。例えば、人事部長の部下が、人事部長からのパワハラに対して、どこに相談していいかわらない、というもので、こうしたご相談は決して稀ではありません。

また、相談者がパワハラの相談をしたところ、窓口担当者の人事部長が、相談者に対して、この相談者自身の非を指摘しながら延々と説教をした、というご相談を頂いたこともあります。このケースでは、相談者の怒りの矛先は、そもそもの問題のパワハラの相手方当事者である直属の上司ではなく、この人事部長になっていました。このケースは、相談者にも相当に大きな問題があったと記憶していますが、人事部長の、とても適当とは言えない対応に、すべてが吹き飛んでしまった事例でした。

【参照ストーリー】人事労務のリスク管理メモ2017年11月号

人事部長自身がパワハラを理解できないような場合でも、これは人事の問題だからと責任者として担当者に安易にしてしまうと、このようなとんでもない事態に至る可能性があるということです。パワハラ防止研修で講師を勤める人事部長が、実は部下に対するパワハラ常習犯であったなど、笑うに笑えない話ですが、実際にご相談を受けたことがある話なのです。

以上の事例は、全体から見れば、極めてまれなケースかも知れませんが、相談窓口を設置した段階で生じ得る可能性のある問題として、考えておくことが大切かと思います。大切なことは、相談窓口の運営実態をきちんと把握しておくことが、最低限必要なことと感じます。

顧問社労士、顧問弁護士に相談窓口を依頼する場合

社外相談窓口として、普段から相談対応をしている顧問社労士などにその受付対応を依頼する場合、その相談窓口担当者は、普段人事労務に関する相談対応をしている社労士などとは別の担当者にしてもらうことが重要です。

これは二つの重要な意味があります。

一つは、普段から人事労務に関するコンサルティングをしている顧問社労士が相談窓口の担当者になったとしても、相談する従業員は、「どうせ顧問社労士なんだから、会社に都合の悪いことは言わない」「自分の立場は理解してもらえない」「会社の人事と一蓮托生だろう」などと思われてしまうことです。

「ウチの会社には外部のコンプライアンスの窓口があるが、本当にここに相談しても良いのか?」という本末転倒なご相談を頂くことが稀ではありません。これでは人事総務担当者が相談窓口になっていることと同じだからです。もちろん、もし実際にも、社外相談窓口とは名ばかりで、すべて社内に筒抜けになっているなどはもってのほかですが、こうした疑念を払しょくする必要があるということです。

こうした場合の対応としては、相談窓口は別の職員が担当すること、相談内容については、原則として秘密が守られること、社内的な解決対応が必要な場合でも必要最低限の範囲での共有にとどまること、そして適切な取扱いがなされること、相談したことを理由に不利益な取扱は行われないこと、万が一不必要な共有や不利益な取扱がなされた場合には、懲戒処分の対象となること、などを明示することで、社外相談窓口の信頼性をアピールすることが重要になってきます。

もう一つは、これは公正中立の重要性を認識していたとしても、これを維持することが困難になることが多々あることです。

これは私自身の経験ですが、普段から労務管理についてのご相談をお受けいしているクライアント先から、「労働条件に関する質問について従業員に直接説明してほしい」と言われたときのことです。ある内容について淡々と説明をしていたのですが、その説明が一段落したときに、その従業員の方から「それってブラックっていうんじゃないですか?」とぽろっと漏れた言葉に、一瞬思わずカチン、と来てしまいました。

特にその点については、私自身も心を砕いて対応を検討したものであっただけに、よけいに感情的な思いが湧き上がってしまったのではないかと思います。そのあとは、もちろん会社の対応に問題がないことを言葉を尽くして説明をしたわけですが、何とも後味の悪いものでした。

これは相談窓口としての対応ではありませんので、会社側の対応に問題は無いことをきちんと説明をしなければならない場面ではありますが、その従業員の方が、この問題を理解し、納得をしてもらえたのかどうかは、?です。ここで本当にしなければならない対応は、その従業員の方の疑念を払しょくすることであったのではないか、会社側の理屈を一方的に説明することが、問題の解決ということを考えた場合には、果たして正解だったのか、大いに疑問を感じました。分かっているつもりでも、ついついこうした対応になってしまう、という貴重な気づきを得た経験でした。

こうした経験から、私は「相談顧問」と「社外相談窓口」を並行して受託しないことにしています。