パワハラ加害者へのケアの必要性

「○○課長は、パワハラが原因で異動してきたんだって」
「マジで…!?くわばら、くわばら」

「△△さんって、ずいぶん後輩をいじめてたらしいよ」
「そうなの?見かけって、わかんないよね…」

そう言われても甘受するほかないようなパワハラの言動があったのであれば、本人自身の反省材料とすべきものという解釈もできますが、とてもパワハラとは言えないような状況で、部下などが、自分が抱えるストレスを吐き出すかのようにパワハラとして問題解決を会社に求めたような場合、「これはパワハラであるとは認められませんでした」という会社の判断の明示のみでは、パワハラ加害者として指摘された上司らの「パワハラ行為者」というレッテルを、きれいにはがすことは、かなり難しいと思われます。

パワハラの指摘に悩む管理職

業務が立て込んでいたり、たまたま虫の居所が悪いことも、とうぜんあるでしょう。そんなときに部下からの質問に対して、「そんなこと、どうでもいいよ」「今忙しいんだよ、見ればわかるだろ」などとぞんざいな返答をしてしまうことがあったとしても、特段問題があるとは思えません。そうした対応に改めて改善を求めるようなものでもないでしょう。

しかしそう返答された部下が、実はこれまで悩んでいた問題について、意を決して上司に告げたものだったとしたら…もっとも上記のような場合であれば、この部下が上司に働きかけるタイミングについて、状況判断を誤ったとしか思えませんが、「こんなに、やっとの思いで口に出したのに…」という気持ちが強かったとしたら、

「上司はいつも忙しそうで、何か質問しようとしても、とても出来る状況ではありません。でもこのままでは業務上の問題が起きるのではないかと心配になった私は、意を決して、上司に対して対応方法について質問しました。それに対して上司は『自分で考えろ』の一言で済まされてしまいました。私の仕事など、どうでもいいと思っているとしか感じられませんでした。」

などと人事などに報告するのかもしれません。この上司は、部下を無視するパワハラ上司、と指摘されてしまったわけです。

パワハラとしては認めない。他に何か…?

しかし事実関係を確認した結果、パワハラであるとは認めませんでした、という結論にすればきれいに問題が解決する、というわけでもなさそうです。会社としては、パワハラとは認めないという結論を出したのだから、上司としては何も心配する問題ではない、と考えるところですが、問題はこの後です。

会社としては、この上司に対して、無罪放免を告げたとしても、容疑をかけられたことにショックを拭いきれない、というご相談もあります。部下からの指摘を受け、事実関係の聞き取り確認をしたところ、とてもパワハラとは考えられないという結論に達したため、その段階で上司を無罪放免としたのですが、この上司としては納得ができません。

部下からのパワハラの指摘を一方的に聞いただけでは、何か自分だけが問題があるかのような報告をなされたままの状況ではないか、自分だけが悪く言われただけで、釈然としない、という訳です。

しかもこの上司にも、パワハラの指摘をした部下に対して、相当なストレスを感じていながら、言うべきではないと我慢をしていたとしたら、

「私だって我慢をしていたんです。いくら注意や指導をしても、全く要領を得ないし、どうしていいのか分からない部下だったんです。態度だって、いつもヘラヘラしていて…そんな部下から、今更のような相談をされたって、私だってやることを山ほど抱えているんです。ふざけるな!って気持ちになっても、しょうがないじゃないですか。」

という答えが返ってきそうです。単純なコミュニケーションの問題、と言ってしまえばそれまでですが、問題がここに至っては、

「もうあの部下とは仕事ができません」

ということになるのかも知れません。

これから何をすべきか?

「あなたは上司なんです。部下を指導するのはあなたの役割です。」

これは正論ですが、この場でのこの返答は、この上司に対する遠回しな退職勧奨にしかならないでしょう。この上司と部下を、離職という選択肢を取らせずに、いかにこの状況を打開すべきか。実はこの答えは極めてシンプルです。この問題の根本的な原因は、コミュニケーションの欠如なのですから、お互いの気持ちを理解しあえるような状況を提供することで、すんなり解決できるように感じますが、どうでしょうか。問題は、そうした状況を提供する方法です。これはケースバイケースで検討することになると思います。

【参照ストーリー】人事労務のリスク管理メモ2019年4月号