「これまでずっと、AかBだったのに、何で今回はCなのか」「自分よりもはるかに劣る○○が昇格しているのに、何で自分は…?」「いきなり以前のミスを指摘されたり、これまで言われたことのない能力不足を告げられ、納得ができない」などなど、人事考課の時期になると、決まって不満が噴出します。これが一過性の愚痴なのか、それともトラブルの前兆なのか、一見して見分けがつきにくいものですが、黙認したり放置するような、いわゆるスルーしてしまうこともあまり適当とも思えません。

不満の原因は説明不足

こうした不満の原因は「説明不足」の一言に尽きます。人事考課の後では、必ず結果に対するフィードバックがあると思いますが、まれにフィードバックすらないというケースも見受けられます。フィードバックは必ず行う必要があります。なぜこのような評価になったのか、の説明です。評価のプロセスで十分に話は聞いているからいいだろう、ではまずいのです。結果に対する説明が必要なのは、結果に応じて、ボーナスや賃金に影響があるからです。

相談者は何が不満なのか

結果に対する明確な説明ができれば、問題は解決するのといえば、話はそんなに単純ではありません。なぜ不満を持つのか、という疑問に対して、それは自分の思惑と異なる評価になったことにある、つまり、もっと評価が高いはずだ、という気持ちが、根本的な理由です。極論すれば、評価が高ければ、おそらくはフィードバックなど、本人はどうでもいいと思っているのではないでしょうか。

評価が低い理由を明確にすること

評価が高ければ、その理由などどうでもいいのに、評価が低ければ、「何で?」となります。トラブルを未然に防ぐという観点からは、「なぜ評価が低いのか」の理由をきちんと説明できるようにしておくことが必要、ということになります。

もしここで明確な説明ができずに、賃金などの重要な労働条件を決定してしまうような形になってしまえば、もしこれがトラブルとなってしまった場合には、不利な対応を迫られることになります。

しかし一方で、下手な説明をすれば、逆に問題が大きくなるのではないか、と考える向きもありそうですが、裏を返せば、明確な説明ができないような結果となっていることがその原因ではないでしょうか。では、なぜ明確な説明ができないのでしょうか。それは評価基準が曖昧であることが大きな原因であることが往々にしてい見受けられます。

やっぱり相談者に問題がある場合

最初から、きちんとした理由を説明し、その理由は評価が低くなることに何ら疑問の余地がないものであるような場合であれば、それに対して文句を言う相談者なら、これは単なるわがままですから、毅然と対応することが重要です。問題は、その見極めでしょうか。こうした場合でも、相談者はその問題がどこにあるのか、自分が無理を言っているのか、それでもやはり会社側の説明に問題があると感じているのか、少なくとも、おぼろげながらでも自分で分かっていると思います。そうした気持ちは、話し合いのやり取りの中で、ふとしたことから顔を出すからです。

このような様子を見て取ったときに、ついやってしまいがちなことは、その言葉尻を取って、鬼の首でも取ったように相談者を追い詰めてしまうことです。そういた行為は、この状況を平穏に収めることに、何のプラスにもならないことに気が付く必要があります。こうした隠れた気持ちが見えたときは、「ほら見たことか!」と勝ち誇るのではなく、静かに「君は、そう思っていたんだ…」とその気持ちをそもまま汲み取るような一言を発するだけでいいのです。この後で、長い沈黙が続いたとしても、何もすることは無く、ただ相談者の様子を伺っているべきかと思います。相談者が、自らその状況を受け入れようとする時間だからです。

後付けの理由は必ずトラブルになる

そもそも、なぜ後から詳細な理由説明が必要になるのか、なぜそれを相談者から求められるのか、ということを考えなければなりません。相談者は、評価が低いことが問題である、と考えているのではありません。なぜ低いのか、についての納得のできる説明がなされていないから、低い評価が不当だ、というのです。

このときに、後からとってつけたような理由を説明すれば、更に相談者の不信感は高まります。仮にその理由がもっともなものであったとしても、です。理由が確かに評価を下げることを正当化する合理的なものであったとしても、それを相談者が理解をしたとしても、

「それなら、何で最初から説明しないのか、何で後からそんな説明をするのか」

ということになるからです。最初のフィードバックで、なぜその説明ができなかったのか、その理由を、相談者が納得できるように説明できなければ、相談者の不信感は、全く払拭できないのです。

ここまでお読みいただければ、もうお分かりかと思いますが、なぜ最初に理由説明ができなかったのか、きちんとした理由が説明されなかったのか、それは、きちんとした説明ができなかったから、もっと言えば、説明をしてはいけない、するべきではない、と判断したから、ではないでしょうか。そのような事情があったことについては、おそらく否定のしようがないと思います。

説明不足はさっさと謝ってしまった方が良い

ここで、会社には会社の事情もある、はっきり言えないことだってあることぐらい、分かっているだろう、などと開き直ったとすれば、そら見たことかと言わんばかりの対応を相談者は示すでしょうし、逆に、更に理由の正当性だけを主張して、もういい加減に矛を収めたらどうだ、などとたしなめたとすれば、何で自分の対応が悪いようなことを言うのか、何で自分が妥協しなければいけないのか、おかしいのは会社の対応だろ、などと不満はさらに大きくなります。

当初の説明不足、不適当な説明は否定のしようがないのであれば、ここは、この点に関しては、という限定付きで、頭を下げてしまった方が得策です。これによって、何らかリスクを会社が負うことになるとも思えませんが、これがなかなかできません。できない理由は、上司としての、管理職としての体面、プライド以外に見当たりませんが、どうでしょうか。とはいうものの、このプライド、対面というものも、これはこれで厄介ではあります。

謝るタイミングですが、これは早いに越したことはありません。問題がこじれた後で謝ったとして、相談者は、「何を今さら、フン!」という気持ちでしょう。早い段階で謝ってしまえば、それで問題も解決するかもしれません。同じ謝るのであれば、早く謝ってしまったほうが良い、ということです。

曖昧な評価基準が説明不足の原因を生むことになる

評価基準が明確でなければ、評価結果に対する明確な説明は望むべくもありません。評価基準が曖昧であれば、恣意的な判断が入り込む余地がとても大きくなるからです。もっともこの問題は、制度設計に係るものでもあり、一朝一夕に片付くものではありませんし、評価基準をどんなに客観的なものにしたとしても、評価をするのは生身の人間です。主観が入らない余地はありません。

ですが、客観的な要素は、相談者の納得性を高めることになるのは確かです。抽象的な考慮要素ばかりでは、納得ができる説明をすること自体が難しくなります。客観的な考慮要素は、そうした意味では、納得性の高い説明をするためのツールになる、そうした効果が期待できることにはなると思います。

いずれにしても、本人が明確な説明を求めていないとしても、気持ちに折り合いをつけられるような一言が大切ではないでしょうか。

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