「かわいそうに…彼も時間の問題か…」

などと噂される「彼」の上司である管理職は、なぜ問題にならないのか。人材不足、人手不足の昨今、貴重なマンパワーを容赦なく社外に放り出す管理職は、多かれ少なかれ、問題になっているはずです。そもそもその管理職本人には、部下が次々と辞めていく状況を自らが作っていることに対して、全く問題意識を持っていないと思われます。

しかしこうした状況が社内で黙認されているのは、単純な問題意識の欠如によるものか、黙認せざるを得ないのような社内的な状況があるのか、その管理職をその職務に従事させ続けなければならない何らかの理由があるのか、あるいは経営トップの大きな誤解に基づくものなのか…様々な背景が考えられますが、だからと言って、問題が放置され続けることが適当であるとは思えません。

まずは犠牲となっている部下のケアを

マンパワーの不要の社外放出を避けるためには、まずこの管理職の犠牲となっている部下のメンタル面でのケアが必要でしょう。面談による相談に定期的に応じるなど、気持ちの支えとなる対応をすることは不可欠です。

一方で、業務に支障のない範囲で、業務の範囲を微妙にずらすとか、指揮命令系統や業務に関する報告ルートを変える、などの、この管理職からの隔離をすすめることも重要です。

このように、メンタル面でのケアと同時に、何らかの具体的な改善措置を、ほんの少しでも講じることで、「会社はきちんと考えてくれている」と思ってもらえることが重要になってきます。

上司の嫉妬をどうなだめるか

しかし部下に対してのケアを進めることで、問題の管理職は、注目の焦点が部下に当たっていることに嫉妬し、更に嫌がらせを加速させる可能性があります。この段階で、この管理職には人間関係面での能力に重大な欠陥があることを認識しなければなりません。

まずはこの管理職に対しても、同様の注目をしてあげることが肝要でしょう。まずは話を聞くということですが、その中で、なぜ嫌がらせをするのか、なぜ問題として指摘されるような言動を続けるのか、もし自分で認識しているようであれば、注意を喚起するだけで十分かも知れませんが、こうした管理職は往々にして、そうした嫌がらせについても、まずいこと、してはならないこと、という認識がない場合があります。むしろ自分は正しいことをしている、中には、自分がむしろ部下にいじめられている、などと言うようなこともあります。

部下をいじめる管理職にも理由がある

部下の退職が後を絶たない管理職は、上司として部下を様々な形でいじめ嫌がらせを繰り返していることが考えられます。そのいじめ嫌がらせには、その行為者である上司自身にも理由がある、という意味ですが、もちろん容認できるものではありません。いじめ嫌がらせが、いかなる理由があったとしても、正当化される余地はないからです。

では、この上司である管理職は、なぜ部下をいじめるのか、それはたとえば、日常業務のストレスとか、ちょっとしたミスも許せない、自分の意を反映した仕事が出来ないことに耐えられない、など、いろいろ考えられそうですが、そうした理由である場合には、おそらくは、いじめ嫌がらせについて注意を受けたことが無い、あるいは、注意を受けても、自分の言動はそれには該当しない、と考えている可能性が無いでしょうか。そうであれば、いじめ嫌がらせについて、具体的な行為を指摘をして、それを止めるように指導をする、これを根気よく繰り返すほかありません。

自分に自信がないことの裏返しであることも…

部下をいじめて退職に至らせたことを自慢するように公言する管理職もあります。このような話を聞かされている部下の気持ちは複雑です。俺にいじめられれば、退職することになるから、日々忖度に努めるように、と責め立てられてるように感じるのではないでしょうか。

一方で、こんな公言をする上司は、それを聞いている部下たちの、自分に対する恐れをなしている様子に、満足しています。自分自身が、管理職として上司の役割を担うための、自分自身を鼓舞する自信、実際には虚勢を張っているだけなのですが、そうすることで、上司本人は、何とか上司を演じられているのかもしれません。部下をいじめ続けなければ、上司としての役割を果たせないのです。やがけこの上司は、部下をいじめ続けることも、重要な自分の仕事であると錯覚し、その状況に満足し始めます。そこに問題意識など全くありません。これは上司である管理職本人にとっても、会社にとっても、適当なこととは思えません。

人材としての能力を、改めて見極める

この管理職に対して、教育指導を行うにあたっては、まずはその人材としての能力を、改めて見極めることが大切になってきます。キャリアが長ければ長いほど、そんなことは分かり切っている、とこれまでと同じ考え方で判断してしまっては、新たな展開が考えられません。

まずは採用当初、新入社員のころ、どのような業務を行い、どのような職場環境で、人間関係の状況はどうだったか、などを振り返ることがことが大切になってきます。その後昇進、昇格し、部下を持つ立場になり、管理職としての人間性、専門性にどのような変化があったのか、変化が生まれたのか、を確認することで、新たな能力、新たな問題点が浮き彫りになってきます。

その上で、改めてどのような業務、どのような職場で、何をさせるのかいいのかを検討することが肝要ではないでしょうか。

ところが、部下の離職の原因は、全く別のところにあった!?

部下の離職が後を絶たない管理職には、管理責任がある管理職としての何らかの落ち度があることは否定しがたいところですが、その原因が管理職自身の不適切な言動にある場合ばかりとは限りません。その上司である管理職は全くの蚊帳の外、という場合もあるからです。しかも、その事実を実行犯らは巧妙に隠し続けているかも知れないのです。

【参考コラム】「隠れハラスメント」は深刻な盲点

派閥による集団でのいじめ、ストーカー行為…

例えば、部下の中に、派閥を作って特定のスタッフの排除を目的に、無視や暴言、仲間外れなどの嫌がらせを常態化させているケース、立て続けに離職するスタッフが女性スタッフであるような場合には、次々にストーカー行為を繰り返す男性社員の存在があるケースなどが、後から問題として顕在化することがあります。こうしたケースでは、表向きは職場環境は健全に保たれているように見えるものの、その実態は脅迫と暴力で事実を隠し続けている可能性が考えられます。

【参考コラム】人事労務のリスク管理メモ2021年6月号

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