雇用型?自営型?…テレワークについて考える

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新型コロナウイルスのあおりを受ける形で、テレワークへの注目が増しているようですが、端末上での作業が中心の業務の場合、必ずしも職場という特定の場所でなければできないような制約が無ければ、自宅勤務としても、業務の遂行という意味では特段の支障はないでしょう。問題は従業員個々人をどう管理するか、それは言わずもがなですが、労働時間に関してです。この縛りが無ければ、従業員本人次第という側面はあるものの、労使双方にとってメリットは、大きなものと言えるのではないかと思います。

労働時間をどう把握するか、という問題は、労基法上の問題として考える必要があります。というよりも、労基法上のルールにどう乗せるか、というテクニカルな問題をクリアすることが、労働時間の問題の解決でもあります。ですが、労基法上の縛りをクリアすることがテレワークの成否とは、必ずしもイコールではありません。つまり、形を整えたとしても、うまくいくかどうかは「どう仕事をさせるか」にかかっているということです。

テレワークは業務をタスク志向にする

目の前に居ない、見えない部下に対して、何を指示し、どう仕事をさせるか、普段職場で仕事をしている状況からは大きな変化です。「ちょっと、○○さん」という訳にはいかないのです。寝そべっていようが、テレビを見ていようが、居眠りをしていようが、漫画を読んでいようが、スマホを見ていようが…管理のしようがない、ということです。

ですが既に、目の前にいない部下に対して指示を出しながら業務を遂行している部署があります。それは、外回りを中心とする営業です。外にいるのですから、彼ら彼女らが、どんな態度で、どんな表情で、どんな声色で顧客と話しているのか、電車の中で周りを憚らずに電話をしていても、マスクなどで口を覆うこともせずに場所を憚らず大音量のくしゃみをしていても、管理のしようがありませんが、それは当然の前提になっているでしょう。彼ら彼女らは、顧客と会うことがそもそもの仕事ですから、上司としては、いつ、どこで、だれと会うのか、その会談の内容と契約の見込みや成否を確認できればいいでしょう。マナーを守ってお行儀よく振舞うことが仕事の目的ではないからです。この是非はともかく、結果として、契約という成果を得ることが仕事だからです。

さてテレワークに話を戻しますが、目に見えない部下に対して、業務の状況を管理するのは、具体的に何をしたのか、という目に見える形に表すことができる成果です。もちろんWEBカメラなどで監視する、という方法をお考えになる向きもあろうかと思いますが、心理的な牽制にはなっても、根本的な解決策ではないでしょう。所詮職場で一緒に仕事をしている訳ではないのですから、同じ状況を作ろうとすること自体に無理があります。それ以上に、プライバシーの問題などは、会社にとってリスク要因ともなりかねないものでしょう。そうした意味でも、テレワークの業務進捗管理は、成果に拠らざるをえないのではないでしょうか。テレワーカーに求めるものは、椅子に姿勢よく座って、よそ見をすることなくひたむきに端末に向き合うこと、ではないはずだからです。もっとも、それは職場で仕事をする場合でも同じではあります。

自営型テレワークと雇用型テレワーク

テレワークには「自営型」と「雇用型」があるとされています。厚労省のガイドラインでも、「自営型」と「雇用型」の両方が準備されています。労働行政を司る厚労省が「自営型」のテレワークをも対象にしているのは、テレワークは「自営型」つまり、個人事業主であったとしても、その実態は労働者類似の要素が多分に含まれていることを前提にしているのでしょう。あるいは「労働組合法上の労働者」になり得ることを想定しているのかもしれませんが、テレワークという働き方が、自営型にも、雇用型にもなり得る働き方である、そうした実態が名実ともにある、という特徴は、テレワークという働き方を考える上で、極めて重要な要素といえます。

では、自営型と雇用型の違いはどこにあるのか。当然と言えば当然ですが、会社との契約形態で見れば、自営型は業務委託契約あるいは請負契約であり、雇用型は文字通り雇用契約、という違いです。この契約形態の違いは、労使双方にとって、とても大きなものです。こうした点に言及すると、雇用契約に対する労働法上の制約を逃れるために、テレワークを業務委託契約に切り替えるという問題を想起されるのではないでしょうか。実態は労働者でありながら契約は業務委託契約となっている、という問題の場合、その実態が労働者であれば、契約形態が業務委託契約であったとしても、労働者として労働諸法令の適用があると判断されます。

ところが、テレワークの場合、その強いタスク志向という特徴がある働き方の実態が、そもそも自営型と雇用型があり得るという、従来の労働者概念の範疇から大きくかけ離れているため、労働者性の実態判断が極めて難しいという側面があることになります。つまりテレワークの場合の労働者性の判断は、契約形態である程度の答えが出てしまうということでしょう。もちろん、テレワークであったとしても、常に業務上の指揮命令をしているとか、徹底した時間管理をしている、という側面があれば、これは労働者と判断される余地もあろうかと思います。しかし、こうした指揮命令や労働時間管理が、物理的に困難な実態があるという側面は否定できません。こうした特徴は、テレワーカーの場合には、雇用契約を業務委託契約に切り替える際の法的なハードルが相対的に低いことを示していると思います。

また、強いタスク志向の業務は、人材の流動化を促すものとも言えるでしょう。具体的に何をするのか、何ができるのか、が明確であることは、ニーズに合致するかどうかも明確に判断できることになりますから、人材能力を普遍的にする効果があるともいえるでしょう。職場内での人間関係や協調性といった客観的に把握しにくい枠組みから解放されれば、会社に対するロイヤリティーも相対的に低くなることは間違いありません。

雇用型を自営型に変更する…?

雇用型テレワークを自営型に変更する場合に考えなければならないのは、その影響です。自営型にする、ということは、いわばその「雇用する社員」を「独立」させる、ということに他なりません。つまり会社の指揮命令下に置くことができなくなる、ということです。繁忙期に仕事を「発注」したとしても、他社からの条件いい仕事の後回しにされるかもしれません。独り立ちをしたかつての社員の成長を、遠くから見守ることも親の役割でしょう。「自営型」に変更した後は、親も子離れを迫られる、ということです。

上記のように、自ら進んで「自営型」を選択するようなケースは別とすれば、一般的には、やはり安定した収入が得られる雇用契約を、そう簡単に手放すとは思えません。収入が仕事に大きく左右される「自営型」は、大きな収入が得られるチャンスがあるということは、当然ですがジリ貧になるリスクも大きい、からです。

一方で、会社に対する「自営型」への変更のインセンティブは、人件費の削減、つまりリストラにしか見当たりません。ここで考えなければならないのは、「自営型」に変更する場合のリスクです。上記にも触れた通り、人材の流出という事態が避けられません。「自営型」に変更するということは、独り立ちさせることであり、同時に雇用契約を解除することだからです。これが果たして人件費の削減効果と比較して見合ったものかどうか、慎重に検討する必要があります。もはやこの独り立ちした社員が開発したサービスを独占することができません。独占しようとすれば、それに見合った対価が必要になります。そう考えますと、本当に人件費の削減につながるのか、一面的には判断が難しいと思います。

トラブルを避けるためには…

晴れて自営型で独立を果たした社員が、自分の思惑とは異なる成果しか得られなかった場合、会社に対して、「自分の意に反して業務委託契約への変更を強いられた」とか「大きな期待を抱かせるような説明で、誤った意思表示をさせられた」などと主張されるかもしれません。どう考えても難癖をつけられたとしか思えないようなケースであったとしても、トラブルが顕在化することは会社にとっても少なからず思わしくない禍根を残すことになるでしょう。こうした誤解(?)を避けるためにも、「自営型」への変更に際しては、これが仮にその社員から進んで臨んだものであったとしても、そのリスクについて、きちんと説明をしておくことは重要かと思います。

また、「自営型」への変更は、上記とも重複しますが、雇用契約の解除であり、これが労使双方の同意に基づくものであれば、合意退職であり、これが会社から一方的に告げられたものとされれば「解雇」であるという点を認識する必要があります。業務の内容が変わらないとしても、「これまでとは何も変わらないから」という説明は、極めて不適切であるということです。

「自営型」への変更のリスクを読み切れないのは、労使双方にとって同様の思いでしょう。そうした意味では、「自営型」か「雇用型」か、という判断には、不確実な要素があまりに多すぎることがネックになっているとも考えられます。こうした場合への対応として、期間限定で自営型に変更し、その期間が終了した場合には、「雇用型」に戻すことが考えられます。

もっともこのような場合には、雇用型に戻ることが予め想定されているため、自営型本来の自由度にはいくばくかの制約があることは否めませんが、自営型に変わることによって、会社からの業務命令や時間管理といった拘束から解放される状況を実感することはできるのではないでしょうか。その間、独自に新規の顧客を開拓することについても、制約を一切設けないとすれば、自分の能力を客観的に把握する機会にもなるでしょう。

当初予定の「自営型」期間が終了した場合、その社員本人が、そのまま自営型で行くか、あるいは予定通り雇用型に戻ることも、いずれを選択することもできる余地を残して置くことで、不安や不満を解消することができるのではないでしょうか。

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