いきなりではあっても、直接電話口で唐突に告げられるのはまだいい方で、人事宛に退職届が郵送されてきたとか、メールやラインで「辞めます」と送って終わり、というものまであり、その理由を掴みかねる状況が増えているように感じます。

こうした状況に、最近のスタッフは常識が無い、ルールを守れない、などと愚痴をこぼしていても、問題が解決するわけではありません。今考えるべきことは、離職の意思表示の伝え方の問題ではないでしょう。メールやラインで「辞めます」の一言で退職の意思表示を済ませるような非常識なスタッフは、さっさと辞めればいい、こちらからお引き取り願うくらいだ、という解釈もある意味で大切かも知れませんが、今考えるべきことは、なぜ離職という選択をしたのか、意思表示をしたのか、という本人お気持ちであり、背景です。

この理由を探ることで、社内の隠れた問題を発見することができるきっかけになる可能性もあるでしょう。そうした問題を一つずつ克服することで、社員スタッフの定着の問題も解決できるのではないでしょうか。

なぜ離職という選択をしたのか

その理由を問いただして、何とかその一端でも聞き出せれば、職場の改善のヒントや今後の社員の定着策を検討するきっかけ程度にはなるかもしれませんが、果たしてどの程度本音を話してくれたのか、本当は別のところに大きな原因があったのでは、などと妄想を膨らませればきりがありません。

会社として知りたいのは、なぜ離職という選択をしたのか、その動機です。それをオープンにしてもらうためには、その退職の意向を持つスタッフにどのように働きかけるべきか、これはケースバイケースで対応するほかありませんが、あらかじめいくつかの引き出しを用意しておいて、状況に応じて引っ張り出すようにすることも、意味があると思います。

まず、相手を認めてあげること

退職の意向があることを、まずは受け止めるということです。唐突な退職の意思表示を非難したくなるかもしれませんが、もしその意思表示の仕方を非難したとすれば、閉じた殻を開けることは、もうできないかもしれません。

ですので、まずはその退職の意思を尊重するという姿勢を示すことでしょう。その上で、これは状況次第ですが、出来れば翻意を求めてほしいところです。君のような戦力がいなくなれば職場でとても困る、仕事ができるあなたの存在は大きい、など、本人を認める一言は不可欠でしょう。

その中で、その本人が達成した象徴的な出来事や、大きな成果などを、エピソードのように振り返ってみることも効果がある場合があります。充実感を持って仕事に取り組んでいた当時の状況を振り返ることで、退職という選択の重みを確認させることができます。

強い意思を持って退職の選択をした場合でなければ、翻意をする可能性もあるかもしれません。ですが、翻意をさせることができればそれでよし、としたのでは、そもそもの離職の意思表示の動機は闇の中です。その動機を聞きたい訳です。

あなたの気持ちを話すこと

いきなり退職を告げられてどれほどショックだったか、とか、残念な気持ちを率直にお話になることも有効でしょう。ここで大切なことは、ただあなたの気持ちをお話になるだけです。それ以上でも、それ以下でもありません。とつとつとお話になればそれで十分でしょう。ですが、退職の理由や動機が知りたいとしても、まだそこに踏み込むべきではないでしょう。できれば、本人から自然に口に出させることがベストです。間違っても詰問口調で、攻め立てるようにお聞きになることはご法度です。

それでも理由を口にしないとき

聞き出す、という姿勢は本人に警戒心を与えるだけでしょう。あくまでもあなたの気持ちとして、「何で退職なのかなぁ…」などと、半ば独り言のようにお伝えになることも一つの方法でしょう。

また、リスクはありますが、退職のきっかけとなった何らかの事実について、漏れ聞こえているような問題があれば、それとなく話してみても良いかもしれません。そのときには、その事実を何処までぼかすか、客観的な事実であるかのように淡々と話すかは状況判断ですが、例えば「○○さんから聞いたんだけど、◇◇って、ほんとなのかなぁ…」などと、これを問い詰めるという姿勢を見せずに、半ば独り言ののように投げかけてみてはどうかと思います。

泣き落としはあまりすすめられませんが…

背景にあるであろう特定の事実関係について、何らかの言質を得たいということであれば、あまり賢明ではないかもしれませんが、「残る同僚たちのためにも、協力して欲しい」などと、ストレートに求める方法もありますが、これはケースバイケースで微妙な判断が求められると思います。

すでに外部に相談している可能性もある

私がネット上で開設している相談サイトからお受けする相談の大半は、実は、社内的には何も解決行動を起こしてない、のです。つまり、相談していること自体を、会社としては把握していないということです。

もちろんここでお受けする相談内容は、何らかの問題があることを前提にその解決方法を相談するものですが、では退職という意思を固めた方が、すべて何らかの問題を抱えていたわけではないでしょう。このように考えますと、外部相談窓口があれば、本人が問題として認識するものについては、把握できる可能性が高くなるということは言えると思います。

社外相談窓口としての対応については、「社外相談窓口への相談には2つのタイプがある」のページをご覧ください。また、個別の事案ごとのご相談については、「労務相談・相談顧問のお申込」から、ご連絡頂ければと思います。