組織的な問題が発覚した場合の対処法

ある特定の管理職をターゲットにして、パワハラ被害申告をコンプライアンス窓口に大量に出しているらしい…!?
明日かなり複数名のスタッフが一斉に欠勤することを画策している…!?
社内スパイがいる…!?
ウソなのか事実なのか見当がつかない、たまたま漏れ聞こえてきたよからぬ噂話から、何やら物々しい雰囲気が漂ってきたとしたら、これは単なるうわさと放置黙認を決め込んで良いものか、あるいはその真相を探り当てて、何らかの対応をするべきなのか、悩ましい判断です。

どうも複数のスタッフが関与しているらしい…?

会社組織に対して何らかの危害を加えるなどの犯罪行為を仄めかされているとすれば、それに対しては、断固とした対応を取らなければなりませんが、おそらくたいていの場合は、仲良しグループがみんなで一緒にどこかに遊びに行く類の、そのようなものの延長線上のものではないかと考えられますが、一方で、社内に派閥らしきものがある場合には、その背景についても気にしておく必要があるでしょう。

噂の内容から業務への影響を推測する

そこで噂されていることがどのようなものなのか、それがもたらす業務への影響の程度については、予測をしておく必要はあるでしょう。なお、それが労働者としての権利行使につながるものである場合には、使用者からの働きかけは不用意なものであるという点は留意が必要かと思います。

事態把握のためのいくつかの視点

ですがあくまでも噂の範囲なので、どこまで踏み込むべきなのかは、状況判断ですが、その内容に応じて、事実確認程度はされておくべきかもしれません。具体的に何らかの対応をするべきかどうかについては、いくつかの視点があります。

問題の行為は一過性のものか

それが他愛のない程度のものであれば、一旦は放置黙認し、実際に表立って何が起きたのかが確認できた段階で、その事実関係に対して対応をお考えになれば十分ではないかとも考えられます。ですが、仮に他愛ない悪戯程度モノであったとしても、繰り返されることが適当ではないとも考えられますから、再発防止を込めたお灸程度は据えておく必要があるかもしれません。

何が問題行為の原因か?

ですが、その問題行為の背景に、職場や業務に対する不満とか、あるいは何らかの問題がある場合には、その背景にある問題の解決のための対応を考えなければなりません。問題行為の背景にその原因となる問題があるのであれば、その問題が解決すれば、問題行動自体が必要のないものとなるからです。この時に、問題行為の原因である問題の解決を図らずに、問題行為をどのように阻止をするかだけを考えたのでは、事態の収拾どころか、さらに状況が悪化する可能性すらあります。何が問題の核心なのか、解決すべき問題は何か、を見極めることが大切になってきます。

看過できない場合の対応

仮に一過性のものであったとしても、あるいは、問題行為の原因である問題の解決に向けた対応をしているとしても、問題行為が実行された場合の業務遂行に対する影響、職場秩序を破壊するような事態が想定される場合には、その問題行為自体の阻止を図らなければならないことも考えられます。

その時点では、おそらく問題行為の実行計画とか、その内容がおおよそ把握できていると考えられますので、まずはその実行犯らに対して、実行した場合の懲戒処分を含めた処分の可能性と、今ここで思いとどまるならば、懲戒処分事由に該当するこれまでの対応についても不問に付す、といった話し合い、交渉によって、問題行為の阻止を図ることになるかと思います。

問題を絞り込む

問題行為の阻止等の対応をする場合、その問題行為の具体的な内容の把握は不可欠で、特に今回のように複数の関係者がいる場合、一律に問題を考えることが適当ではないことが想定されます。問題行為の関係者が一律に同じ考え方、立場、状況ではないからです。そうした場合、問題を全体として一つの対応するのではなく、個別具体的に問題を細分化して、そのそれぞれ個別に対応をお考えいただくことが賢明かと思います。

キーマンは誰か?

問題行為に複数の関係者がかかわっている場合、様々な利害関係から、関係者の立場や思惑はそれぞれ異なっているとしても、その問題行為をリードする首謀者、震源地は必ず存在します。そのキーマンが特定できれば、このキーマンと問題行為の阻止に向けたやり取りをすることで、効率的に事態の収取を図ることができる可能性があります。

もちろんキーマンの影響力にもよりますが、ことを荒らげずに事態の収束を図ることを考える場合には、このキーマンとの話し合いで対応することのみによって、平穏に鎮静化を図ることが賢明ではないかと思います。

ちなみに、誤解があるといけませんので、コメントしておきますが、御社に社内組合がある場合、こうした問題については、まず組合、執行委員長に対して、問題の確認と未然防止への協力対応を求めるべき、ということになるかと思います。

それと、もし万が一、そのキーマンが取締役などの役員クラスである場合、これは労働法で対応ができる範疇を超えていることを認識しなければなりません。

問題行為の実行後の対応

問題行為が不幸にして起きてしまった場合、まず考えなければならないことは、業務遂行上の障害となる事実の有無、職場秩序への影響、です。何らかの有形無形の損失が生じた場合には、その回復を図らなければなりません。このときに、何らかの処分をする場合には、その損失の大きさと、関与する従業員の規模などの状況を勘案したうえで、合理性、公平性、相当性の観点から、処分が必要かどうかを含めた判断をする必要があります。例えば関与する従業員が多数の場合には、処分者があまりに多くなりすぎる可能性があります。かといって、それでは、そのうちの一部の従業員のみに処分をするとしても、合理的な処分者の選定ができるか、という問題もあります。

問題の程度が軽微である場合には、これは関与した従業員のキャラクターや良心、感性にもよりますが、問題行為が公然化した後でも、あえて言及するようなこともせず、何も問題とせず、何事も無かったかのように放置することも考えられます。お咎めも処分も何もない状態に対して、使用者側の真意を測りかねて、疑心暗鬼に陥り、不安で耐えられなくなる関係者が出てきます。数週間もしないうちに、一人、二人と、謝罪と反省の弁を自ら申し出てくるようになる可能性もあります。

これは、問題行為に自ら収拾を付けさせるという意義があるだけでなく、従業員個々人のキャラクターや特性を見抜く機会にもなります。